Be Innovative -踏み出せ、道を拓け-
FUJIFILM Value from innovation

まだ見ぬ未踏の
新規分野を切り拓く

高機能材料開発本部 担当 峰村

新たな業界へ参入せよ――
手掛かりがない中からのスタート

峰村が育休明けに復職した職場は、発足したばかりの新しい部門だった。
「私が配属された高機能材料開発本部のミッションは、当社がまだ開拓できていない業界に参入するために、培ってきた独自の技術や素材を活用して新たなビジネスを創り出すこと。最初の頃は、目標とする業界だけが決まっていて『で、何からやるの?』という状態。初期メンバーとして試行錯誤しながら始めていったというのが正直なところです」
峰村のタスクは、参入を目指す新規分野の業界構造を分析し、想定顧客先へ足を運んで引き出したお客様のニーズと富士フイルムの持つシーズをマッチングさせ、新規商品の開発・事業化を見据えたマーケティング活動を展開することだ。そのためにはまずお客様の声に耳を傾け、お客様の「困りごと」や「叶えたいこと」を知ることが出発点となる。富士フイルムが従来取り組んできた、独自技術を強みに開発した商品を市場に売り込むスタイルとは全く逆のアプローチ。どうやってお客様の心の扉を開くのか――新しいフィールドでの峰村の挑戦が始まった。

試行錯誤の中での“妄想”から
お客様との共通の“夢”へ

その中の一つが、自動車業界へのアプローチである。
「知識がない中でのファーストコンタクトでは、会話の糸口を掴むためにこちらの“妄想”を次々にぶつけました。『これから自動車はこうなってほしい、運転の機能や外装、内装はこんなふうになると嬉しい!』とか」
何度も通い続けるうちに、ようやく少しずつお客様の求めるものが見えてきた。業界は今、100年続いたガソリン車から電気自動車に移行しつつあり、完全自動運転が現実味を帯びるなど、大きなパラダイムシフトを迎えつつある。それを実感レベルで掴み始める中で、新参者の富士フイルムにどんな価値提供ができるのか、おぼろげながらヒントも見えてきた。
峰村は、富士フイルムが永年培った要素技術を駆使した高機能素材に目を付けた。これを新世代のクルマの新たな素材として用いることをお客様へ提案。すると、その可能性の幅に、ある自動車メーカーの担当者が「これ面白いね」と興味を示してくれた。お客様が思い描く“夢”を、共に実現するビジネスのきっかけが見えた瞬間だった。
掴んだきっかけは逃してはならない。すぐに社内の技術者とともに何種類ものサンプルを精魂込めて制作しプレゼンしたところ、お客様の好感触を得ることができ、ビジネス検討スタートのきっかけを手にすることが出来た。しかし、喜び意気揚々と社内に戻った峰村たちを大きな課題が待ち受けていた。

開発に着手できるか
立ちはだかる社内の壁

「商品化を目指すにあたっていちばんの大きな壁は、社内を動かすことでした。お客様の要望に応えるためには素材開発まで遡って取り組む必要があり、研究所など役割の異なった10近くある関係部門全てに協力して動いてもらう必要がありました。中でも商品開発の鍵を握る研究所の所長を“落とす”ことができなければ、ものづくりは始まりません」
ところが当初、所長は簡単には首を縦に振らなかった。研究所は既に様々な案件を抱えており、この案件にリソースを割くことで本当に会社に貢献できるのか、トップである研究所長は、それを総合的に判断する大きな責任がある。新たな挑戦にはリスクがつきものだが、その上で勝算があることを証明出来なければ、いくらお客様の要望があっても開発には踏み出せない。研究所に開発テーマとして取り上げてもらうためには、まだ説得材料が足りなかった。頭では理解できたが、分かってもらえない悔しさが残った。
峰村は悔しさをばねに、リベンジマッチに向け、更なる情報の収集・分析に奔走した。自動車業界の市場動向を分析したデータや、将来に渡る効果の試算、お客様へのヒアリング結果…。社内でアドバイスをもらおうにも、前例がなく、自力で道を切り拓くほかない。あらゆる手段を講じて情報をかき集め、データとロジックを積み上げた。
更に今回の案件は、必ずしも数字では評価できない価値が成功の鍵を握っていることが判った。社内を説得する上で、実は最も難しいのがこの点だった。富士フイルムはメーカーとして、これまで技術的に他社を凌駕することに開発目標を定め、「他社よりも何%優れている」と技術的なスペックや優位性を明確に数字で示すことで商品化を判断してきた。しかし今回は決して数字だけでは評価しきれない価値を、価値と認めてもらうことが必要だ。
データとロジックだけではあと一歩説得力が足りないと考えた峰村は、最後のひと押しの作戦を講じた。本当にお客様が評価しているのか半信半疑だった所長をはじめ、開発リーダーの面々を自動車メーカーの担当者に引き合わせたのだ。
「お客様が当社の提案に対し、『これいいよね、きっと実現してください』と熱を込めて話してくださる。その生の声を直接一人ひとりに聞いてもらったのです」
そのお客様の声を聞いて、判断に慎重だった所長がついに動いた。
「研究所としてこの開発テーマに取り組むことに決めた。一緒に新しいものを創ろう」
半年かけた峰村の熱意ある奔走が実を結んだ。ついに開発スタートのジャッジが下り、社内にプロジェクトチームも立ち上がった。

次の可能性のタネを探して――
挑戦は続く

いよいよ開発のプロジェクトがスタートを切ったが、実際に商品に搭載されるまでの道のりはまだまだ長い。お客様の要望にマッチせず、「こんなものがほしかったのではない」と、厳しくダメ出しを受けることもある。
「一緒に同行した技術担当者の悲しそうな顔を見るのがすごく私は嫌で、『諦めないで。まだ改善の余地がある』と声をかけます。お客様の夢を実現するためにも、一緒に道を切り拓いてきた仲間のためにも、前を向いて進み続けたい」
今回スタートを切った自動車業界にとどまらず、峰村たちは幅広く市場の探索を推し進めている。
「新規市場開拓はやりがいのある仕事ですが、これまで富士フイルムが取り組んでいなかった、ファッション、家電、建材といった幅広い市場を探索し、当社の素材や技術を面白いと言ってくれているお客様が見つかり始めています。ビジネスはタイミングが勝負なので、とにかく早く世の中に出すこと、価値が認められ製品として認知されるようにすることが目標です」
トライ&エラーを繰り返しながら、お客様とともに新たな価値を創り出していく峰村たちの活動は、新しい試みとして社内でも注目されている。会社の未来の可能性を拡げる成功事例をつくれるかどうか、これからが勝負だ。
「この仕事はお客様から教えていただくことが本当に多い。何もないところからスタートして、心の距離を縮め、お客様と一緒に答えを探していく。ゴールが見えない中で道を探っていかなければならない難しさはありますが、お客様と一緒に価値を創り上げていくこの仕事にとてもやりがいを感じています。視点を変えるだけで日の目を見る素材が社内にはきっとまだあるはず。それを見つけて育てていくのが、私の次なる挑戦です」
文字通り、フロンティア・スピリットが鍛えられる日々である。

※ 部署名・インタビュー内容等は、
2016年8月時点の取材内容に基づきます。

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